その2

その2    絶対モーツァルト法(高周波音が脳を活性化する)  篠原佳年著

モーツァルトの音楽が、能力開発やヒーリングに役立つと言われていることは
知ってはいましたが、なんとなく無視をしていたわたしでした。
というのも彼の音楽に少しばかりトラウマのようなものを感じさせられていたからです。

わたしは昔ながらのピアノ教育を幼い頃受けましたから、
バイエル、ツェルニーといった面白みのない練習曲を山ほど弾かされました。
その先にあったのが、先生の一方的に与えるモーツァルトのソナタでした。
トルコ行進曲あたりは楽しく弾いた覚えがありましたが、
いずれにせよ、あのころのわたしにとって、ピアノの練習は苦痛意外の
なにものでもありませんでした。勝手に弾きたいものを弾くのは大好きでしたが、
クラシックピアノのレッスンは、そういうものではありませんでしたから。

自分としては、ベートーベンの悲愴あたりを、眉間にしわを寄せて弾いたり、
はたまたショパンのセンチメンタルなメロディーラインに酔ってみたい、
などと心には思い描いていたのですが、先生に何か言えるような雰囲気は
まったくありませんでした。
ということで、次から次へとモーツァルトのソナタを与えられることに、
苦痛を感じていたのです。わたしがもっと練習する生徒であれば
先生もいろいろ与えてくださったのでしょうが・・・。

今回例によって、図書館で本がおいでおいでをしていたので、
モーツァルトに関するこの本を読んでみることになりました。

簡単に言ってしまうと、彼の音楽には高周波音が特別に多く用いられているので、
それを聴くと耳や脳が活性化するというものです。
耳は何でもかんでもを、聞いている人に伝えてはいないそうです。
その人にストレスを与える音、必要のない音は勝手にカットしてしまうのだとか。
(内耳には3つの小さな骨があり、ここで取捨選択している)

最近話題になっている英語教材で英語を聞き取る耳を育てるというものが
ありますが、これなども普段無意識にカットしている帯域の音を
今一度聞き取れるように訓練するというものです。
日本語は125~1500ヘルツなのに対して英語は2000~12000ヘルツの音を聞き分けないと理解できないという違いがあるそうです。

この理論はトマティス博士という方が始めに提唱しました。
ここのメソッドを実践するには特別の機材がそろったセンターに
行かなければならないので、費用がかなりかかります。
ということで他の人が、もっと安価で自宅でできる訓練方法を開発したのが
マジックリスニングというものらしいです。(根本は違うとありましたが・・・
目指す所には共通点がありますね)

トマティスメソッドを試した著者は、パリのある教会で、至高体験をします。
ステンドグラスの光につつまれた教会で、弦楽四重奏を聴いたところ、
ありとあらゆる音を聞き分けられる耳を荘厳な気持ちの中に感じたのです。
曲目は、モーツァルトのアイネクライネナハトムジークだったそうです。
モーツァルトの耳を世界に伝えてください、というメッセージも感じたそうです。

モーツァルトの耳とは、いったいなんでしょうか?
彼が天才的に耳が良かったことは有名ですが、訓練によって
それに近い耳を持てる可能性を誰もが持っていると著者は書いています。
一般の人より高い周波数帯域である4000ヘルツのあたりが
一番良く聞き取れるという耳がモーツァルトの耳とも言える理想耳だそうです。
この帯域をよく聞けると、脳は活性化され集中力も高まるらしいです。
モーツァルトは、超未熟児だったので、幼児が持っている原始耳の状態で
耳ができあがり、大人になってもその柔軟性を失わなかったのではという
仮説を著者は立てています。音楽一家の中で、母マリア・アンナの愛情を
一身に受けて育ったことも、その耳を作り上げるのに多大な影響を
及ぼしたと考えられそうです。

これを読むと、ここはやはりモーツァルトを聴いてみたくなるものです。
今ベストセラーとなっている本(というか本つきCD)「アマデウス魔法の耳 集中力」を買ってきてCDを聴いてみました。

聴いていて思ったのですが、確かにモーツァルトの音楽には
人の心を活性化して前向きに生きる元気を呼び起こす何かがあります。
高い音がころころ流れていることに関係があるのかどうか・・・。
こうくれば、こうなるといった予定調和的展開も、聴きこんで行くと
心地よいものです。
特に午前中に聴くとよいようです。脳が目を覚ますのに一役かってくれる
というわけです。これを機会にいろいろ聴いてみようかと思います。


   
                  




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